eKYCの気になる導入効果を解説
はじめに
昨今スマートフォンの普及が進んだことで、本格的なオンライン決済・キャッシュレス時代を迎え、オンラインで本人確認を完結するeKYC(electric Know Your Customer)がフィンテック企業を中心に導入され始めています。なぜeKYCを導入する企業が増えているのか、導入効果としてどんなことが期待できるのかについて解説いたします。
eKYC導入の背景
eKYC導入の背景には、近年の国際的なテロ資金対策や、大手金融機関を狙ったサイバー攻撃などへの対策のために、本人確認の厳格化が進んだことが挙げられます。 日本では、金融庁と警視庁が連携を図り、「犯罪収益移転防止法※」を強化することで、本人確認の厳格化が進められています。2018年に犯罪収益移転防止法が改正されるまでは、本人限定郵便による対面での本人確認が一般的でしたが、法改正後はオンライン上で本人確認を完結することが認められ、従来の本人限定郵便に加えて、「eKYC」による本人確認が可能になりました。 eKYCは後述する様々な導入効果から、マネーロンダリングや犯罪の温床となりやすい金融機関などの特定事業者に限らず、幅広い事業者に対して導入が進んでいます。
※犯罪収益移転防止法:
マネーロンダリング(犯罪によって得た収益の出所を不明にし、犯罪資金に回すこと)の防止や、犯罪組織への資金流用を防止するなど、犯罪によって経済に悪影響を及ぼす行為を防止するために2007年から施行されている
諸外国のeKYC導入状況
オンライン上で本人確認を完結するeKYCを可能にする法整備が各国でも進んでいます。 FATF※というマネー・ロンダリング対策における国際協調を推進するために設立された政府間会合が、「FATF勧告」を策定し、34の国・地域及び2国際機関に対して、勧告の遵守状況を監視するための相互審査を実施しています。
FATF勧告では、適正な顧客管理措置及び記録の保存やマネーロンダリングの刑罰化など40の項目が求められており、それらについて法整備がなされない場合、FATF会合にてマネーロンダリング・テロ資金供与対策の「ハイリスク国」として国名公表される可能性があります。ハイリスク国として公表されることで、海外取引に支障が生じたり、マネーロンダリング・テロ資金供与対策の抜け穴になる可能性を避けるため、各国では本人確認の厳格化や、その導入を推進するための法整備を実施しています。(日本では「犯罪収益移転防止法」を整備) そこで事業者にも消費者にも負担をかけず、かつ厳格に本人確認を実施できる先進的なeKYCの導入に、大きな期待が寄せられています。
※Financial Action Task Force on Money Laundering:金融活動作業部会
各国のeKYC実施のための法整備
ドイツ
2014年に、一定基準を満たすことでビデオ認証※を対面認証とみなすことが認められる
スイス
2016年にビデオ認証※とオンライン認証が許容される具体的手続きを整備
フランス
2018年にeKYCにおける追加措置の手法を拡大
アメリカ/イギリス/シンガポール
eKYCにおける方法の法律上の指定がなく、事業者の判断で様々な手法を取り入れることが可能
※ビデオ認証:
スマートフォンのカメラを用いて本人確認書類を撮影してシステムにアップロードし、その後ビデオ通話上で、訓練された従業員が目視や質問によって本人確認作業を行うことが要件となっている。
eKYCの導入効果
eKYCがここまで注目されるのには多くの理由が挙げられます。
その中でも大きな理由を3つ紹介します。
①本人確認業務の簡略化・コスト削減
eKYCを導入することで、本人確認のために費やしていたコストや時間を大幅に削減することができます。 今まで行われていた郵送での本人確認の場合、届いた本人確認書類は1通1通手作業での確認を行わなければなりせんでしたが、eKYCの場合は申し込みから本人確認の完了まで全てオンライン上で行えるため、手作業で行っていた確認業務もPCがあれば行うことができます。 その結果、一括で本人確認を行うことも可能となり、確認業務に携わる人的コストの削減や運用負荷削減を実現することができます。
②申込者様の離脱率の低下
eKYCで本人確認を行うために、申込者に本人確認書類とご自身の容貌を撮影していただきます。その際に万が一、事前に選択した本人確認書類とは別の本人確認書類が撮影されている場合やマイナンバーの裏面など必要な情報以外の撮影されてしまった場合は、即時システムが判定をし、その場で差し戻し・再撮影を促します。 今までの郵送での本人確認方法では、問題が判明し、差し戻しが発生した場合には返送を行い、申込者が直してから、再度郵送で送り返してもらう必要がありました。その結果、郵送コストがかかってしまうのはもちろんのこと、申込者側も申し込みを途中でやめてしまうという課題が発生していました。 しかし、eKYCならば、もし差し戻しが発生したとしても、その場で再撮影を行うことが可能ですので、離脱率の低減につなげることができます。
③マネーロンダリングや不正利用への対策
現在、eKYCは多くの金融機関を中心に拡大を続けています。その理由のひとつが、犯罪収益移転防止法でも定められているマネーロンダリングの対策に役立てることができることです。 郵送での本人確認の場合は、配達員が1件ずつ訪問し、本人かどうかを確認して、本人確認を行っていました。ただ、現実的には本人だけではなく、その家族や同居人も受け取れてしまうという課題が存在しています。 しかし、eKYCの場合は、本人の容貌も撮影し、送信することから、必ず本人しか申し込みを行うことができません。そのため、マネーロンダリングやその他の不正に利用しようとしている犯罪組織からの申し込みを未然に防ぐことが可能です。もちろん、不正利用に関しては金融機関などの特定事業者以外の事業者の方も活用することで、多くのメリットを得ることができます。
eKYC導入における具体的な活用シーン
①オンラインでの銀行口座開設
■従来
口座開設を行う場合、従来は転送不要郵便での本人確認が一般的でした。軒先で転送不要郵便を受け取り、本人確認書類を配達員に提示し郵便物を受け取ることで本人確認が完了するため、口座開設には7~10日ほどの期間が必要です。また、申込情報に不備が見つかった場合には、その倍の期間がかかることもあります。また、一通あたりの郵送費として数百円のコストがかかっていました。
■eKYC導入後
最短即日で口座開設が可能になるだけでなく、郵送費にかかるコスト削減も可能になります。
②中古品買取時の本人確認
■従来
転送不要のダンボールなどを送ったり、本人確認書類のコピー提出と簡易書留を受け取ることで本人確認を実施する必要がありました。スピーディーな本人確認を行えないことで、苦労して問い合わせをいただいた利用者の離脱が課題になっていました。
■eKYC導入後
本人確認~査定までを全てオンラインで実施できるため離脱率の削減、問い合わせ数の増加が可能になります。
③Web試験時の本人確認
■従来
全国共通模試や、大学入学共通テストを受験する際には、試験会場の卓上に学生証を置いたり、所属する学校などの教育機関で本人確認を実施する必要がありました。特に昨今では感染リスクを避けるために、試験のWeb化が求められています。
■eKYC導入後
申込と試験をWebに絞ることで、感染リスクを避け、完全オンラインでの管理が可能になります。
④マッチングアプリ
■従来
簡単な個人情報を登録するだけでアカウント登録ができたため、なりすましや不正利用の犯罪件数が増加しており、安全性の向上が求められていました。
■eKYC導入後
本人確認書類の年齢の自動確認や、なりすまし防止のための動画撮影により安全性を向上させることが可能になります。
まとめ
ここまでeKYC導入の背景とその効果に関する様々な情報をお届けしました。eKYCは単に本人確認をオンライン上で行うだけではなく、その先に業務効率の向上や申込者の負担軽減による離脱率の低下などの実現が可能です。 そのため、eKYCは導入による費用対効果が見込めるサービスとして導入をご検討される企業が増えてきています。
現状は、特定事業者において、書類審査の最終確認を人の目で行うよう定められておりますが、弊社は今後必ずシステムのみでの本人確認ができる世界が来ると考えています。その時を見据えて、 弊社のeKYCシステムは開発されております。