はじめに
生成AIの発展に伴い、eKYCを取り巻く不正リスクは大きく変化しています。ディープフェイク技術の進化により、従来の本人確認では対応が難しい不正手口も登場しています。
金融機関をはじめ、SaaS、シェアリングサービス、古物取引、不動産など、本人確認を必要とする事業者にとって、不正利用への対策はサービスの信頼性を維持するうえで欠かせないテーマです。
ディープフェイク対策として、公的個人認証サービス(JPKI)を活用した本人確認への関心も高まっています。
本記事では、ディープフェイクによる本人確認のリスクと、「ホ方式(本人確認書類と容貌画像による本人確認)」と「カ方式(公的個人認証サービス(JPKI)を利用した本人確認)」の違いを交えながら、公的個人認証サービス(JPKI)が本人確認対策として注目される理由を解説します。

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1.ディープフェイクによって変化するeKYCの不正リスク
生成AIの普及により、誰でも高品質な画像や動画を短時間で生成できるようになりました。画像編集や動画生成に関する専門知識がなくても、AIツールを利用することで精巧な映像を作成できる環境が整っています。
こうした技術は業務効率化やクリエイティブ分野で活用される一方、本人確認を突破するための不正にも悪用されています。
eKYCでは、本人確認書類と本人の顔画像・動画を照合する仕組みが広く利用されています。しかし、ディープフェイク技術の進化によって、本人になりすました映像を作成する難易度は大きく下がりました。
従来は画像を加工する程度の不正が中心でしたが、現在ではリアルタイムの顔合成、高精細ディスプレイへの表示、AIによる動画生成など、不正手口はさらに高度化しています。
本人確認に求められるのは、「本物らしく見える映像」を見抜くことではなく、不正そのものを成立させない仕組みを構築することです。
本人確認では、映像を判定する方式に加え、信頼できるデータを活用した認証方式への注目が高まっています。
2.ディープフェイクを悪用した本人確認不正の手口
ディープフェイクを利用した本人確認不正では、AIで生成した顔画像や動画をスマートフォンやタブレットへ表示し、その映像を本人として提出する手口が知られています。
本人確認書類の画像を加工したり、高精細な印刷物を利用したりすることで、人による目視確認をすり抜けようとする手法も確認されています。
ディープフェイク技術の進化に伴い、画像や映像を判定対象とする本人確認では、不正技術との競争が続いています。生成AIの性能向上に合わせて検知AIも継続的な改善が必要となり、運用負荷も増加します。
また、本人確認の精度を維持するためには、AIのチューニングだけではなく、運用ルールの見直しや目視確認の追加など、多くの対策が必要になります。その結果、システム運用コストや人的負担も大きくなります。
そのため、画像や映像を判定する本人確認だけではなく、不正の成立を防ぐ認証方式への注目が高まっています。
3.ホ方式(本人確認書類・顔写真撮影方式)が抱える本人確認の課題
ホ方式は、本人確認書類と本人の容貌画像を撮影し、その画像や動画をもとに本人確認を行う方式です。
オンラインで本人確認を完結できることから、多くのサービスで採用され、現在でも幅広く利用されています。
一方で、判定対象が画像や映像である以上、ディープフェイクや高精細ディスプレイを利用した不正への対応には課題があります。
また、AI判定だけではなく、人による目視確認を組み合わせる運用では確認作業の工数が増えます。利用者が増えるほど審査件数も増加し、バックオフィスの負担が大きくなるケースもあります。
生成AIの進化によって映像の再現性が高まった現在では、「本人らしく見えるか」を確認する方式だけではなく、「本人だけが利用できる情報」を確認する認証方式が求められています。
ディープフェイクによる本人確認不正が現実的なリスクとなる中、画像や映像だけに依存しない認証方式への関心が高まっています。その代表例が、公的個人認証サービス(JPKI)を利用したカ方式です。
4.カ方式(公的個人認証サービス(JPKI)を利用した本人確認)が本人確認対策に有効な理由
カ方式では、公的個人認証サービス(JPKI)を利用して本人確認を行います。
ホ方式のように画像や映像を判定するのではなく、マイナンバーカードのICチップに格納された電子証明書を利用し、公開鍵基盤(PKI)による暗号技術で本人確認を実施します。
利用者はマイナンバーカードをスマートフォンへかざし、暗証番号を入力します。ICチップ内の電子証明書に付与された電子署名を検証することで、その電子証明書が本人のものであることを確認し、本人確認が完了します。
ディープフェイクによって顔画像や動画を精巧に生成したとしても、マイナンバーカードのICチップ内の電子証明書を利用した本人確認を代替することはできません。
つまり、公的個人認証サービス(JPKI)は「映像が本人らしいか」を判定する仕組みではなく、「本人だけが保有する電子証明書を利用しているか」を暗号技術によって確認する仕組みです。
本人確認の対象が映像から電子証明書へ変わることで、ディープフェイクを悪用したなりすましへの耐性を高められる点が、公的個人認証サービス(JPKI)の大きな特長です。
5.ホ方式とカ方式の違い
ホ方式とカ方式は、どちらもオンラインで本人確認を行う方式ですが、認証の仕組みは大きく異なります
| 項目 | ホ方式 | カ方式(JPKI) |
|---|---|---|
| 本人確認方法 | 本人確認書類と容貌画像撮影 | マイナンバーカードのICチップを読み取り |
| 判定対象 | 画像・動画 | 電子証明書 |
| 認証方法 | 目視確認・画像判定 | 電子署名を検証 |
| ディープフェイク対策 | 映像の真偽を判定 | ICチップ情報を利用して本人確認 |
| 運用負荷 | 目視確認が発生する | 自動化しやすい |
ホ方式はオンラインで本人確認を完結できる利便性があります。一方、画像や映像を判定対象とするため、生成AIによる不正への対策には継続的な対応が必要です。
カ方式は、公的個人認証サービス(JPKI)を利用し、マイナンバーカードのICチップ内の電子証明書を利用して本人確認を行います。
映像ではなく電子証明書を利用することで、より信頼性の高い本人確認を実現できます。集まりがちですが、実際には取得後の利用ルールまで整理しておくことが欠かせません。

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6.公的個人認証サービス(JPKI)が利用される主な業界
公的個人認証サービス(JPKI)は、本人確認の信頼性が求められるさまざまな業界で活用が進んでいます。
例えば、銀行や証券会社などの金融機関では、口座開設や各種契約時の本人確認として利用されています。
また、不動産業界では賃貸契約や売買契約、シェアリングサービスでは会員登録や本人確認、古物取引では本人確認義務への対応など、幅広い場面で活用されています。
SaaS事業者においても、法人向けサービスの契約手続きや本人確認業務の効率化、不正アカウント対策として導入を検討する企業が増えています。
本人確認の厳格化と業務効率化を同時に実現できる点が、公的個人認証サービス(JPKI)の特長です。
7.企業が本人確認を見直すべき理由
本人確認が突破されると、不正アカウントの開設、不正契約、不正送金、不正受給など、さまざまな不正利用につながります。
企業は金銭的な損失だけでなく、ブランドイメージの低下や顧客からの信頼喪失といった影響も受けます。一度インシデントが発生すると、調査や問い合わせ対応、再発防止策の実施など、多くの時間とコストが必要になります。
生成AIは今後も進化を続ける中で、本人確認に求められるのは「精巧な映像を見抜くこと」ではなく、「なりすまし自体を成立させない仕組み」を導入することです。
公的個人認証サービス(JPKI)を活用したカ方式は、マイナンバーカードのICチップと電子証明書を利用して本人確認を行うため、映像に依存しない、より信頼性の高い本人確認方式として注目されています。
まとめ
生成AIの進化に伴い、ディープフェイクを悪用した本人確認不正への対策は、eKYCを導入する企業にとって重要なテーマとなっています。
ホ方式はオンラインで本人確認を完結できる利便性がある一方、画像や動画を判定対象とするため、生成AIを悪用した不正への対応には継続的な対策が必要です。
一方、カ方式は、公的個人認証サービス(JPKI)を利用し、マイナンバーカードのICチップに格納された電子証明書によって本人確認を行う方式です。映像ではなく電子証明書を利用することで、ディープフェイクによるなりすましへの高い耐性を実現できます。
生成AI時代の本人確認では、安全性だけでなく、業務効率や利用者の利便性も重要な要素となります。今後の本人確認環境を見据え、自社サービスに適した認証方式として、公的個人認証サービス(JPKI)の活用を検討してみてはいかがでしょうか。











